実績(5) クリスマス直前の差し止め
差し止めの怖さ
クリスマス商戦に関連する商品が、直前で流通ストップになったらどうでしょう?
何とかして弊害取り除こうと思いますね。
投資額が高ければなおさらのことでしょう。
ところが、知的所有権の侵害警告でのストップは簡単に回避できるものではありません。
そして、いったん差し止めになってしまえば、最終的に訴訟に勝っても失われたチャンスが二度とは戻ってこない場合が多いといえます。
こう考えると、細かい反論点を探しだして強行に突っぱねるよりも、速やかに交渉して何らかの合意できる和解を求める対応も必要になります。
YAが依頼されたケースをご紹介しましょう。
外国で訴えられて
外国で訴えられた場合に、警告してくる相手が外国の企業で、相手の弁護士も外国人というケースがほとんどだから、話は簡単には進みません。
利益が相反する事例に合意するという難しさに加え、残念ながら日本人には言語や時間の違いが問題となってしまいます。
更に相手本人に直接連絡するのではなく、代理人を通じてコミュニケーションをとらなければならないから、二重、三重のクッションが介在するわけです。
そんな場合には書類のやり取りだけでは誤解も多くスムーズな解決が難しいといえます。
ではそんな時にYAは依頼を受けてどのように対処しているか?
最近扱った欧州の著名ブランド名の侵害問題の例で説明しましょう。
すでに暗礁に
YAに相談があったときには、すでに日本の依頼人→欧州弁護士→欧州の相手方弁護士→相手企業、と話しが順送りとなって、議論が暗礁に乗り上げている状態でした。
相手の弁護士から最初に警告状が発せられたのは数ヶ月も前なのに、クリスマスの数週間前になっても話し合いは何の進展もなかったのです。
経過をひっくり返してみると、営業担当で法律は専門外の日本の依頼人と、欧州代理人との間で書面でのやり取りを行い、書面を受けたら社内での会議の結果を相手に送りつけるだけでした。
勿論日本の依頼人へ、欧州弁護士が直接電話をかけて細かい報告をしてくることはありえません。
担当者も、書状が到達した地点でその他の仕事のファイルと一緒にしたり、「そのうちに回答を出せば」と考えて後回しにしたりでその処理が遅れてしまっていました。
微妙なニュアンス、雰囲気も英語の手紙では伝えにくいといえます。
短時間で処理したい
そのように、依頼者はすでに、差し止めの予告と、損害賠償を請求されていました。
そのままでは到底、クリスマス商戦に間に合わせて商品を欧州へ供給できません。
このような、企業の存亡をかける瀬戸際まできていた問題を、「短時間で解決して欲しい」、と依頼されたのがなんとクリスマスの数週間前でした。
限られた時間内で効率良く状況を掌握し、解決するにはどうするか?
直接相手の企業と交渉するために、まず欧州の代理人を解任しました。
そして山口特許事務所で10ヶ月研修したハイムズ弁護士(上の写真ですが)が代理人を引き受けて、相手方の企業内の弁護士と直接、電話を使って交渉を開始したのです。
中間の経由地点を省略して、日本から直接相手の本丸に乗り込んでしまうというやり方です。
誤解の蓄積だった
冗談を交えながらの電話でわかったことは、根底にある問題はそう複雑なものではなかったということでした。
数ヶ月もの間、書類だけのやり取りだったため誤解が生じていた上に、回答が来るのが期限から数か月遅れだったり、文書が硬かったり。
そのために「強硬な相手」と受け取られた、といった問題の蓄積で相互に不信感が募り、話がこじれていたのでした。
数回の直接の電話の交渉によって問題点がさほど大きいものでないことを理解してもらうことができました。
先方の大きな誤解も解消されました。
最後には親切にも、どのような文面で回答してくれればよい、新たに侵害しなければ賠償の請求を取り下げようとまでいってくれたのです。
その結果、依頼者は欧州でのクリスマス商戦に堂々と参加することができ、所定の利益を上げることが出来たということでした。