外国出願する前に 優先的に仕事をさせるには
先方の米国特許事務所はたぶん膨大な案件を抱えています。
したがって貴社の依頼した案件は、貴社にとっては貴重な1件でも、相手にとっては膨大な案件の内のただの1件に過ぎないと考えるべきです。
その中で貴社の案件を他の事件に優先して処理してもらうことが、さらに欲をいえば他社の案件よりも丁寧に扱ってもらうことができるでしょうか?
特別な出費をせずに、そんな扱いを受けるために、貴社はどうすればよいだろうか?
その対応策を示しましょう。
案件ごとに期限を定める
まず貴社の案件は1件ごとの、進展ごとに期限をつけることから始めましょう。
出願は何日までに提出してほしい、特許庁から拒絶理由通知が来たら何日以内に貴社あてに発送してほしい、といった期限を明確にするのです。
もちろん、期限を付けた以上、その日を厳守してもらいます。
貴社と米国の特許事務所との間にそのような慣習が成立すると、ささいな案件でも先方は後回しにしにくくなります。
これはなにも日米間の問題ではなく、貴社の社内でも、課内でも同じことでしょう。
しかしそれを意識して外国の事務所に向けに行っている企業はほとんどないのではないでしょうか。
明確な指示を出す
すでに説明しましたが、貴社の指示が「よか頼む」という大雑把な内容だったらどうでしょう。
先方の事務所でも、どの程度の手をつけてよいのか、どこから手をつけてよいのか、きっと迷ってしまいます。
そうなれば期限ぎりぎりまで棚の上にほって置かれることになりますね。
それだけではない。処理後の内容を見ると、貴社の意図とは異なっていた、という可能性も高い、という不幸が重なります。
なにをしてもらいたいか、そこまではしないでほしいか、1ステップごとに明確に指示をだすべきなのです。
自分も期限を守る
特許庁との書類の往復があれば、先方の事務所から貴社に対して期限付きの書類が送られてきます。
「8月11日が特許庁へ提出する期限だから、反論があれば7月11日までに当事務所まで回答するように。」と。
このような指示が来たら、貴社でも確実に期限を守って回答しなければなりません。
貴社の反応が相手に対するモデルになるのです。だから非常に重要です。
同時に、常に貴社が自らも厳しく期限を守っていること、これが相手の事務所への無言のプレッシャーとなるという効果も期待できるでしょう。
送金も確実に
なんと言ってもビジネスはお金です。お金をキチンと、たくさん払ってくれる依頼者がすばらしい依頼者ですね。
企業の規模や技術力、開発力もさることながら、すくなくとも相手の特許事務所の経営者にとっては確実な送金ほどありがたいことはないはず。
貴社が、相手事務所の経営者にそのような印象を与えることができれば、強力なプライオリティーを獲得することができるでしょう。
経営者が今日の会議で、貴社の案件を扱う担当者にひとこと「あそこは大切なクライアントだよ。」と言ってくれたとすれば、これは大きな優先権を得たといっていいでしょう。
個人的な付き合いを
相手事務所の担当者と、貴社の担当者との個人的な付き合いも大切です。
貴社に英語で冗談が言える社員がいれば最高です。
しかし今は会話に近い雰囲気で個人的にやり取りができるメールがあります。この武器を使って担当者どうしの友人的な付き合いを構築するのです。
担当者の背景技術や卒論のテーマ、さらにはスポーツの趣味などの情報を交換しあって担当者のキャラクターを印象付けるのです。
これがFAXや郵送文書では、まず誰が読むか分らないからそうは行きません。
しかしメールで冗談を言い合える関係になると、担当者のちょっとしてミスも大げさになる前にもみ消してもらえる場合もあります。
借りができれば返さなくてはならないが、それはともかくそんな関係になれば貴社の案件はライバルの案件に優先して取り扱ってもらえるでしょう。
訪問する
海外の特許事務所は、ひんぱんに日本の企業の知財部門や特許事務所を訪問してきます。その際には面倒がらずに積極的に面会することです。
まして貴社が先方の事務所のお客さんであれば、例え英語に慣れていなくとも一生懸命に聞き取って対応してくれます。話題を合わせてくれます。
さらに有効なのが、先方の事務所を訪問することです。
訪問しても事務所の内部を見るだけで作業の実態はわからないはず。しかし事務所の所長はじめ幹部や担当の所員とことばを交わせば相当の雰囲気は分るはずです。
貴社の案件がどの部屋でどのような順序で扱われているか、それを見るだけでも安心感が沸き、あるいは注意点が分ります。
日本へ帰ってから、依頼者なり、社内の関係者に「あそこの事務所は安心ですよ。なんせ明細書の書庫に入るのに二重のカギが必要なのだから」などと自信を持って説明できます。
日本へ帰ってからの指示も適切になり、先方としても貴社の案件を優先して扱わざるを得なくなるでしょう。