外国出願する前に 料金の取り決め (以下を参考に、自己責任でおねがい致します)
主導権を渡さない
依頼事項の着手前に、今後の料金の取り決めをしておくこと、これが非常に大切です。
この取り決め、すなわち料金契約がなくて仕事を依頼すれば、料金を決定する主導権は法律事務所側に移ってしまいます。
お互いに誤解を生じないように、案件に着手してもらう前に契約を取り交わしておくのです。
契約書とは
契約書といっても料金に限った簡単なものでいいのです。
例えば特許出願は一律で1500ドルとしたり、ランクを難易度によってa、b、cと区別し、aは1200ドル、bは1500ドル、などといった取り決めです。
あるいは時間当たりの単価を明確にして時間比例にしておき、ただし10時間を超えた場合には問い合わせをすること、という取り決めも考えられるでしょう。
契約書はどちらが?
この契約書をどちらで作るか、ですが、相手は契約書作成の専門家である法律事務所です。きわめて偏った、先方に有利な契約書になりやすい。
しかしそれほど難しい問題ではありません。
貴社がチェックポイントを押させていればいいのです。同意しない部分を指摘して返送すればいいのです。
料金の契約書をこちらで作って、先方に修正してもらうのであれば、こちらの一方的な主張をとりあえず取り入れて自由な文章が作れるので、交渉には有利な立場でスタートが切れるともいえます。
料金契約のチェック項目
依頼する範囲を明確にする
「日本人の印象」の項目で記載したように指示が曖昧では、先方に悪気がなくても多額の請求が来てもおかしくない。
先方の弁護士とすると最善の努力をする義務があるのだから、その義務にしたがって作業を行い、その時間に単価を乗じて請求してきたのですから。
したがって、例えば「特許出願のみを依頼する。」「現段階では審判を依頼してはない。」「送付した書類をそのまま出願するように。手を加えてはならない。」といった指示を明確に記述しておきます。しかしこれは貴社の責任も重くなることを意味しています。
例えばこちらが指示しないのに先方の事務所が勝手に年金を納付してしまい、その料金を貴社に請求してきたとしましょう。
そんな場合には「指示もしない作業の請求に対して支払いはできない。」と主張できるでしょう。
しかし反対に、もし貴社が納付などの指示をし忘れた場合はどうでしょう? 先方の事務所の責任にできないことは明らかですね。
それだけ貴社の責任が重くなる、ということです。何を期待しているか
貴社は先方の弁護士、法律事務所になにを期待しているのかを明確にします。
たとえば出願の代理だけをしてくれればよいのか、「今の段階では補正は待った方がよい。」といった指導も期待しているのか、を明確にしなければなりません。担当者は?
貴社の案件を扱う担当者の氏名を明確にしておいてもらいましょう。
その場合にはもちろんその担当者の技術の背景、特許を扱った経歴などを知らせてもらうことになります。
背景を見て、その担当者では不満である場合には、変更してもらえるような取り決めも記載しておきます。
さらに事務所の都合で担当者が変わることは考えられますが、その場合には事前に知らせてもらえるような取り決めも必要です。請求の時期は?
1件の案件が継続している場合、例えば審判を請求し、補正をし、その後にまた一部の補正をしたという場合に請求書の発行はどうなるでしょう?
貴社の状況によっては、一括で多額の合計金額をドット請求さえるよりも小出しにしてもらった方がよいかも知れないですね。
あるはバラバラと請求がきて、一件落着したと思っているのに「エッまた来た?」 これではいまさら経理やクライアントに連絡をしにくい、という場合もあるかも知れません。
そのような場合を想定して請求書の発行の時期を事前に取り決めしておくことも必要でしょう。時間当たりの単価は?
前記したように米国の法律事務所では、その案件の処理時間に比例した請求が発生します。
その場合には適切な処理時間であるか否かは推定するとしても、担当者の時間当たりの単価が重要になります。
担当者の単価を知らせるように正式に要求できること、事務所としてはABAの規定にしたがってその要求に応える義務があること、はすでに説明したとおりです。
この時間当たりの単価を、パートナー弁護士、弁護士、特許弁護士、エージェント、事務員など構成員ごとに契約書で明確にしておいてもらうのです。請求書の様式
時間当たりの単価を知ったところで、例えば請求書には「特許出願一式」、として計算されていたらなんにもならなりません。
明細書の精読にA弁護士が3時間、一部の修正、様式の統一にパラリーガルが2時間、特許庁への提出作業に事務員が1時間30分といった、担当者(タイムキーパー)別に分類した請求書を送ってもらうことが必要です。
このように担当者別に作業を分類した請求書を出すように、というフォーマットに言及した取り決めをしておきます。
そして、そのような請求書を実際に発行させて手元に置いておくことによって、はじめて根拠のある値引き交渉が可能になるのです。
ただの「高すぎる!」「いやリーズナブルだ!」といった水掛け論に終わらないための。担当者のチームを作れるか?
これはひとつの大型のプロジェクトを依頼する場合の問題です。
例えば新たに特殊な電池部門を作って、年間100件近い出願が予想されるとします。
そのような場合には似たようなテーマの出願が続くのだから、相手の事務所でたまたま手の空いている人を適当にすえつけるのでは統一性にかけるし、出願の前後関係などで問題がでてきます。
だから大きなプロジェクトの進行が予想される場合には、当社の今回のプロジェクトを担当できるチームを作れるか、そのような要求に応えらえるか、保証できるのか確認しておきましょう。通信手段は?
いまどきはEメールが一般的ですが、秘密の価値の高い発明はメールで送ってよいでしょうか。
例えば医薬品は開発に10年、100億円などといわれていますが、そんな情報が、万にひとつでも余所へ流れたら誰の責任になるでしょう。
したがって秘密状態の場合、すなわち公開前にはメール使うな、その後はメールでお願い、とか、FAXは使ってよいか否か、電話は何時から何時まで、といった取り決めが必要となります。
もちろん、多くの大型案件を抱える企業ではすでに実行されているでしょうが、念のため。同業他社の扱いは?
依頼している事務所に、ライバルである同業他社を扱われたくないのが普通の感情です。 しかし特許事務所は一般に高い専門性を持っています。
狭い特殊な技術を扱う場合には、どこの特許事務所でも理解して明細書が書けるというものではない。
したがってひとつの特許事務所が複数の同業の企業を扱う可能性は高いといえます。その場合に「同業他社を扱うことを禁止する。」という項目を入れることができるか否かは、貴社と依頼する事務所との力の関係でしょう。
貴社が、相手の特許事務所の規模に対して十分といえるだけの量の出願を依頼できるのならばそのような取り決めをすることができるでしょう。
しかし年間数件の出願しか予定できないのではちょっと難しい。
ですからここでの問題は貴社に力がある場合ですが、その際には「同業他社を扱う場合には当社に相談するように、」という取り決めをしておきましょう。
では、その条項に従って実際に相談があった場合に、ではどうするか?
依頼していた案件を引き上げるか、今後の依頼を停止するか、あるいは事務所に対して「他社の依頼を引き受けるな」、と指示を出すのか、はっきりした判断が必要になります。満了消滅までの予算は?
貴社が依頼した案件は、審査され、特許になり、やがて存続期間が満了して消滅します。
その間にどんな手続きが発生し、どの程度の費用が発生するのか、そのスケジュールと費用を知らせておいてもらいましょう。
ただし特許に成るまでの手続きは、ご存知のようにどんどん枝分かれして複雑に絡み合っています。
したがって相手の事務所も簡単には説明ができないだろうし、受け取った貴社もどこまでを予算とみるのか難しいところでしょう。
しかし少なくとも登録までの基本的なルートを流れた場合の予算は明確にしておいてもらいましょう。
そうすれば、予算額を越える可能性のある場合には事前に連絡してもらう、という取り決めも可能となります。その他
貴社と特許事務所の間で紛争が起きた場合の裁判の管轄、和解、仲裁の要件、依頼者と代理人との間の秘密保持の特権など一般的な取り決めはここでは言及しません。